はじめに:転機のとき、関係の“差”が出る
職場での異動や新しいチームへの配属。あるいは、就職・転職・結婚・子育て…。
人生には、予期せぬ“転機”が訪れることがあります。
そんなとき、うまく乗り越えられる人と、つまずいてしまう人。その違いはどこにあるのでしょうか?
実は、**ふだんからの「人との関係の築き方」**が、大きく影響しているのです。
易経に学ぶ:人生の歩み方は“履(くつ)”にあらわれる
『易経』の第10卦「天沢履(てんたくり)」には、こんな一文があります。
「虎の尾を履む。人を咥えず」
つまり、“虎の尾を踏むような危うい状況”でも、相手はあなたを傷つけない。なぜなら、そこに「礼(れい)」があるから。
草履を履くように慎重に、ていねいに進むことで、どんな危機も乗り越えられる。
それが、この卦の教えです。
キャリア理論でも「支え」はカギになる
キャリア心理学者シュロスバーグは、人生の転機にどう対応するかを「4つのS」で説明しました。
Situation(状況):どんな変化か?
Self(自分):その人自身の強みや弱み
Support(支援):周囲の人との関係
Strategies(戦略):どう対応するかの工夫
この中で、特に大切なのが「Support(支援)」です。
いざというときに相談できる人がいるか。 そもそも、普段から支えてくれる関係があるか。
ビフォー・アフターで見る「人間関係のちから」
❌ 関係を築いていなかった場合
ある社員が、新しく異動してきた上司に対して、普段から挨拶はしていたものの、あまり積極的に関わろうとはしていませんでした。 「忙しいので…」と業務外の会話を避け、最低限の連絡だけで済ませていました。
そんななか、ある日、その上司と直接連携するプロジェクトが始まりました。 会話はぎこちなく、報連相も表面的なやりとりに終始。
そして、プロジェクト中に大きなミスが発生。
報告をためらっている間に状況は悪化し、上司からの信頼も揺らぐ結果となってしまいました。
「もっとちゃんと普段から関係をつくっておけば…」と、後悔する日々が続いたのです。
✅ 関係を築いていた場合
一方で、別の社員は、その上司が異動してきた当初から、日々のあいさつを欠かさず、 「寒いですね」「いつもありがとうございます」といったちょっとした声かけを自然に行っていました。
また、仕事の中でも「助かりました」「さっきの説明、わかりやすかったです」と、感謝や尊重の気持ちを言葉にして伝えていました。
その積み重ねがあったからこそ、トラブル時もすぐに「すみません、相談があります」と素直に言えたのです。
上司も「普段から信頼できる対応をしてくれていたな」と感じていたため、すぐに力を貸してくれ、トラブルも早期に収まりました。
「礼」を日常に積み重ねていたことで、ピンチの時に大きな“支え”となったのです。
礼は“心の安心基地”をつくる
「天沢履」は、「礼」が身についている人は、たとえ虎の尾を踏むような場面でも大事には至らないと教えています。
つまり、日頃からていねいに、誠実に関係を育んでいる人は、どんな変化やピンチでも安心して進めるということ。
これは、キャリア理論で言う「Support(支援)」を日常から備えておくという考え方とも重なります。
まとめ:関係は“転機”の前から始まっている
上司とうまくいく人、転機を乗り越えられる人には共通点があります。 それは、特別なスキルや派手な自己主張ではなく、「日々の礼」。
「礼に始まり、礼に終わる」 この姿勢が、
信頼を生み
声をかけやすい空気をつくり
いざというときに支え合える関係を築く
あなたも、明日の職場で「おはようございます」から始めてみませんか?
その一言が、明日のあなたを支えてくれるかもしれません。
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